日本は世界でも類を見ない「国民皆保険制度」を採用しており、すべての国民が健康保険に加入し、必要な医療サービスを受けられる体制が整っています。
この制度は、1961年に施行され、国民の健康を支える基盤として、ほかの先進国からも評価されています。
日本の医療保険制度には、職域保険と地域保険の二つの大きな柱があります。企業に勤める人が加入する「健康保険組合」や「協会けんぽ」
自営業者や農業従事者などが加入する「国民健康保険」
さらに高齢者向きの「後期高齢者医療制度」が主な構成です。
保険制度の仕組みと負担
保険に加入することで、医療費の一部を保険で負担するため、自己負担は原則的に3割で済みます。(子どもや高齢者はさらに軽減される場合もあります。)
このような自己負担額が低い仕組みにより、日本では医療へのアクセスが保障されており、予防医療や診療を迅速に受けられる利点があります。
ただし、少子高齢化の進行によって、働く世代が減少し、医療費負担が増える問題に直面しているため、経済的な持続性が課題です。
保険証の種類
健康保険の種類 | 加入者 |
---|---|
健康保険組合 | 大企業などの従業員とその家族 |
全国健康保険協会(協会けんぽ) | 中小企業の従業員とその家族 |
共済組合 | 公務員とその家族 |
国民健康保険 | 自営業者などの、上記の健康保険に入っていない人 |
後期高齢者医療制度 | 75歳以上の人 |
医療費の自己負担割合
年齢 | 一般・低所得者 | 現役並み所得者 |
---|---|---|
0~6歳 | 2割負担 | |
6~69歳 | 3割負担 | |
70~74歳 | 2割負担 | 3割負担 |
75歳以上 | 1割負担 |
保険医療制度の課題
高齢化による医療費増加
高齢者人口の増加により医療費の負担が増しており、特に後期高齢者医療制度の適応者が増加しています。
この制度では、一定以上の所得がある人には医療費の2割負担、又は、3割負担が課せられますが、それでも高齢化全体の増加によって、社会全体の負担は増加し続けています。
医療費の適正化を図るため、地域ごとに医療費を適切に管理し、患者の状態に応じた適切な医療が提供できる体制が求められています。
デジタル化と効率化
厚生労働省は医療費削減や医療サービスの効率を目指し、デジタル化を進めています。
マイナンバーカードによるオンライン診療や薬剤データの共有、電子処方箋の導入などにより、医療機関の事務作業を簡素化し、医療の質の向上を図っています。
しかし、全国的にデジタル技術を導入するには、医療機関や薬局の協力が必要で、各地域で進歩にばらつきが見られます。
診療報酬と医療の質
日本の診療報酬制度は、医療サービスに対する報酬を国が決定するもので、医療の質とコストを調整する重要な仕組みです。
診療報酬は2年ごとに見直され、効率的な医療を提供できるように変更されていますが、これは医療従事者の収入にも影響し、医療提供体制の維持にも関わる慎重な対応が必要です。
新薬の迅速な導入や革新的な医療技術の利用も診療報酬制の見直しによって促進されており、これにより患者が最新の治療を受けやすくなる一方、薬価の高騰が負担としてのしかかっています。
まとめ
日本の医療保険制度は、世界的に高い評価を受けているものの、持続可能性を保つための改革が求められています。
将来的には、医療と介護の連携強化、予防医療の推進、デジタル技術を駆使した医療データの管理などが検討されています。
また、地域ごとに医療の提供体制を整え、医療資源の偏在を解消することが目指されています。